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Little stories

夢か何かだったのかもしれない

No.18

「先生」
「人が足りない」
3人はしかめっ面でそれぞれ腕を組んで考え込んでしまった。

「ええ、今のままでは湖をすぐに見失ってしまいます。遠方で連絡を取って動けるチームが他に2つは要るでしょう」
長老とタイヤンは、今回見失ったことでかなりの落胆を抱えていた。「先生に頼めることは頼んできたんだ」

長老は押し黙った。そこで、ガオシンは口を挟んだ。
「タイヤン、俺だって核を使われるかもしれないリスクを見越して家族に遺言を置いてきているんだよ、他にここに来てくれる奴なんてなかなかいないって」ガオシンはタイヤンをいさめるつもりで言った。 「俺たちをここに呼んだ、先生に相談するしかないと思っているんだ」タイヤンは具体的に話をするしかなかった。ガオシンは比較的ポジティブだが、こういった場合には具体的でなければ納得のしようがなかった。
「先生に?まあ…そうだな。とりあえず、話を聞いてもらう相手としてはまず間違ってはいないな」

タイヤンとガオシンは街に出た。先生に電話をかけるためだった。今回はガオシンが話すと言い出したのだった。「…ええ先生、このまま調査を続けても時間がかかるばかりで…何ですって、もう準備はできている、ですって?」

驚いたガオシンに、先生は一気に話し始めた。「ああ、もちろんこんな巨大な砂漠の中君たち2人では数が足りないと後から思ってね、水質調査・土壌調査のメンバーを2人ほど考えているところだ。あと、他にも手だてがある。彼らが納得してそっちに行くかどうかはまた別だが、まあ落ち着いて行動してくれ。とにかくロプ湖がちゃんとまだ存在していることは幸運にも今回わかったのだから、まだ焦ることはない。水源を探るんだ。そうすれば、地下の淡水も見つかるだろう」

「しかしですね先生、戦争の起きる可能性のあるエリアですよ。そこらへん、どうなさるおつもりで?」

「この状況への評価が低いようだね、しかしながら確かに緊張状態であるものの、この水脈には価値がある。両者の砂漠地帯をカバーできるだけの水源になりうるのだよ。既にそれは根拠を持って信じられている。それを永遠に失うようなことをすると思うかね、な、ガオシン」先生はなだめるようにそう言った。「その価値を超える益を互いが見いだした時のこと」は一切言わなかった。つまり、それだけの価値というのは国内政治の上でも国民の不満を解消させるものであり、友好関係から得られる外交政治のメリットも大きいという観測だった。希望的観測ではあるものの。

「では、俺たちはそのようにすることにします。俺たちへの連絡手段は」「予測地点か、街で待機させるよ」

「わかりました。よろしくお願いします」ガオシンは静かに電話を切った。砂漠でも電波の届く携帯電話は、ガオシンたちにとって常に利用するには高価すぎるのだ。

「ガオシン、先生は何だって」「このまま俺たちは調査を続ければいい、協力者のメドはついていて、フォローは先生がなさると」「そりゃありがてえ」

気がつくと、すでに日は落ちていて、乾期の夜独特の冷たい空気がただよってきていた。

「じゃあ、もう砂漠に戻ろう…か…」2人はその場で固まった。あの女性がそこにいる。服装や雰囲気は出会った時とは全く違っていたが、確かにあの女性だった。「ユエリャン?」彼女の姿をここで見かけることになるとは、タイヤンもまったく思ってはいなかったのだった。タイヤンは思わず走っていって彼女の手首をつかんだが、あまりの細さに慌てて手を離した。その反応は素っ気ないものだった。「何?」色素の薄い肌に、照明のせいではっきりした光と陰の現れた緑色の瞳が不愉快そうに揺れた。「タイヤン、もう少し品のいい行動をしないと嫌われるよ」ああ、確かにこの声は本当にユエリャンだ、とタイヤンはそう思った。「申し訳ない、こいつあんまり驚いたらしいね」ガオシンがタイヤンに目を向けながらユエリャンに話しかけた。「誰あんた」ガオシンは肩を落として、「こいつの仲間。あんた、あの湖で泳いでた子だろ?ここの地元の人じゃない感じがするけど」「細かいことはタイヤンに話したから、彼から聞いてちょうだい」

「どうやら、タイヤンは信用されてるものの俺は全然らしいね、美人さん」「当たり前でしょ、初対面なんだから」あまりの冷たい態度に、ガオシンは苦笑いしながら、「まあ、そりゃそうだな」と言うほかなかった。

「湖は、ロプ湖はどこだ」タイヤンはついに最も訊くべきことを言った。「今は、無くなってる。干上がってる。上流の水が途絶えているから。また、雨の降る季節に来るべきだと私は思うけれど」

「そうか」「乾期の話か」タイヤンとガオシンの2人は納得した。雨期にしか現れないということを教えているのだった。「でもユエリャン、なんでそんなことまで詳しく知ってるんだ?そして、なんで湖を追っかけて生活しているんだ?」

ユエリャンは緑色の瞳をタイヤンに向けた。

「おしえない」

さまよえる湖

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すべてはフィクションです。

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