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Little stories

夢か何かだったのかもしれない

No.22

雨季
「雨季に入って、1ヶ月が過ぎたけど、湖がなかなか現れないね。まあ、調査なんて根気の要ることだけど、これは気力が削がれるね」その夜、ソフィアはテントの中で横になりながらぽつりと言った。

大きくしたテントの別室からは、「まだまだ、これからだよ。俺が見たロプ湖はとても大きかったんだ。こんな雨じゃ足りないくらいに」と、タイヤンの声が聞こえた。「君たちはすごい奴だ、こんな状況で、ずっと調査を2人や4人で続けていたんだろう?」「それも、携帯もなしに」ソフィアが続けて話し、ああ、と、マクシムは大げさに腕を広げて見せた。「おい、マクシム、お前身体がでかいんだからあんまりそうやるなよ」ガオシンはマクシムに言った。

サラはユエリャンのことが気になっていた。「ロプ湖が見つかるといいね…」他の3人は異口同音に、ゴチャゴチャと言ったが、タイヤンは最後に言った。「見つかるよ、さまよえる湖なんだろう?さまよっているってことは、以前動いたところでまた会えるってことだろう」

タイヤンはユエリャンのことをこの時、思い出した。「ユエリャンはどこにいるんだろうな」

ひとしきり雨が降った後、つかの間の晴れが訪れた。
テントの窓を開けたソラは喜んで外に出ていった。
「晴れた!晴れたぞ!」
サラも外に出て、頭をまた、あの出会った時のように布で覆い隠した。ソフィアが、ねえ、一曲演奏してよ、と2人に楽器を持っていった。

タイヤン、ガオシン、マクシムの3人は、その3人の後ろに大きな湖を見て、驚いたまま立ち尽くしていた。その遠くに、誰かがいて、それがユエリャンであることは、タイヤンとサラだけが気づいていた。





「とにかく」「これで最善の調査って奴ができるんだ」「やるべきことも整ってる。これを待ってた!」口々に言っては、それぞれやるべきことにゴソゴソと取りかかっていた。サラはタイヤンに言った。「湖のところに行ってちょうだい、ユエリャンがきっと待ってる」

「ユエリャンって誰?」
マクシムとソフィアが尋ねてきたが、「後で説明するから、今は自分のことをやって」と答えて、更に重ねて言った。「あんたはユエリャンのところに行きなさい、ユエリャンはずっと湖のそばにいるけど、たぶんそれは、この政情のバランスが崩れたらかなわない。でもユエリャンは一応重要人物なんだよ、殺されたりなんかでもしたら」「サラ、詳しく聞かせてくれないのか、あの子は何者なんだよ」「マクシムやソフィアの国では、貴族制度があるでしょう」「俺はそこまで知らないけど…とにかく、それでお察しくださいって訳か、くそっ、問いつめてやる」「そんな!」

タイヤンは走っていった。「おい、タイヤン!」「後で!」叫ぶガオシンに、タイヤンは言い訳もせずに走っていったのだった。

「タイヤン、しばらくぶり。今、忙しいのではないの?」
何事もなかったかのように素っ気ないユエリャンの声に、タイヤンは問い詰めようと近づいた。「マクシムたちのこと、気がついた?こちらに来れるように、私が少し動いたの」「ユエリャンは政治家か?」「いいえ」「じゃあ何だ?あんた何者だよ」「さあね、答える気は一切ないから自分の持ち場に戻りなさい」「俺を駒か何かだと思ってるのか?」ユエリャンは答えなかった。「そう思ってるんだな?自分が権力者の元にいる人間だからか?」

「逆」

白い肌の顔を出して、茶色の髪を風になびかせると、あの明るい緑色の瞳を大きく見開いて言った。
「せっかく晴れたのだから、そんなことを言っていないで、自分の好きなことをすればいいじゃない?」

緑色の瞳が、タイヤンのブラウンの瞳をのぞき込んだ。
「大したことじゃないよ、さあ行きなさい。」

タイヤンがその場を去ってしまうと、ユエリャンはため息をついた。「権力者、ねえ」ユエリャンの瞳には、もう別のものが映っていた。

マクシムの国と、タイヤンの国の間の国には、火種があった。水である。水は稀少であり、タイヤンの探している水脈が見つからなければすぐにも少数民族同士の対立は深まり、それは隣国の政府へと広がっていく。それをよしとしないタイヤンの国の政府は早いうちにと何か手を下すだろう。

タイヤンの国の政府は、既に砂漠を実験場にしたことがあった。その頃には規模があまり大きくなかったためまだ街が残っていた。タイヤンたちがここを訪れて間もなかった頃、地面を掘って出てきたものはその当時、強制的に立ち退きさせられ、そこに残されていたものだった。

「この様子だと、核実験か戦争か、何かしらまた起きるかもね」ユエリャンは髪をゆるくまとめて服の中へしまい、頭と顔を覆った。「そうしないための方策はタイヤンに任せたようなもの。どうして駒として見ることができるなんて思ったのかな」

最善の状態での調査は、順調に進んでいた。サラとソラは地理的知識を駆使し、マクシムとソフィアはコミュニケーションの問題を無くし、タイヤンとガオシンはその中心で調査を続けていた。日が昇り白い直射日光が現れる頃から、日が暮れて紫色の空が見えるまで、毎日続けられた。一日は毎日短く感じられ、時間は消えていった。

さまよえる湖

■---voice---

すべてはフィクションです。

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