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Little stories

夢か何かだったのかもしれない

No.18, No.17, No.16, No.15, No.14, No.13, No.127件]

「先生」
「人が足りない」
3人はしかめっ面でそれぞれ腕を組んで考え込んでしまった。

「ええ、今のままでは湖をすぐに見失ってしまいます。遠方で連絡を取って動けるチームが他に2つは要るでしょう」
長老とタイヤンは、今回見失ったことでかなりの落胆を抱えていた。「先生に頼めることは頼んできたんだ」

長老は押し黙った。そこで、ガオシンは口を挟んだ。
「タイヤン、俺だって核を使われるかもしれないリスクを見越して家族に遺言を置いてきているんだよ、他にここに来てくれる奴なんてなかなかいないって」ガオシンはタイヤンをいさめるつもりで言った。 「俺たちをここに呼んだ、先生に相談するしかないと思っているんだ」タイヤンは具体的に話をするしかなかった。ガオシンは比較的ポジティブだが、こういった場合には具体的でなければ納得のしようがなかった。
「先生に?まあ…そうだな。とりあえず、話を聞いてもらう相手としてはまず間違ってはいないな」

タイヤンとガオシンは街に出た。先生に電話をかけるためだった。今回はガオシンが話すと言い出したのだった。「…ええ先生、このまま調査を続けても時間がかかるばかりで…何ですって、もう準備はできている、ですって?」

驚いたガオシンに、先生は一気に話し始めた。「ああ、もちろんこんな巨大な砂漠の中君たち2人では数が足りないと後から思ってね、水質調査・土壌調査のメンバーを2人ほど考えているところだ。あと、他にも手だてがある。彼らが納得してそっちに行くかどうかはまた別だが、まあ落ち着いて行動してくれ。とにかくロプ湖がちゃんとまだ存在していることは幸運にも今回わかったのだから、まだ焦ることはない。水源を探るんだ。そうすれば、地下の淡水も見つかるだろう」

「しかしですね先生、戦争の起きる可能性のあるエリアですよ。そこらへん、どうなさるおつもりで?」

「この状況への評価が低いようだね、しかしながら確かに緊張状態であるものの、この水脈には価値がある。両者の砂漠地帯をカバーできるだけの水源になりうるのだよ。既にそれは根拠を持って信じられている。それを永遠に失うようなことをすると思うかね、な、ガオシン」先生はなだめるようにそう言った。「その価値を超える益を互いが見いだした時のこと」は一切言わなかった。つまり、それだけの価値というのは国内政治の上でも国民の不満を解消させるものであり、友好関係から得られる外交政治のメリットも大きいという観測だった。希望的観測ではあるものの。

「では、俺たちはそのようにすることにします。俺たちへの連絡手段は」「予測地点か、街で待機させるよ」

「わかりました。よろしくお願いします」ガオシンは静かに電話を切った。砂漠でも電波の届く携帯電話は、ガオシンたちにとって常に利用するには高価すぎるのだ。

「ガオシン、先生は何だって」「このまま俺たちは調査を続ければいい、協力者のメドはついていて、フォローは先生がなさると」「そりゃありがてえ」

気がつくと、すでに日は落ちていて、乾期の夜独特の冷たい空気がただよってきていた。

「じゃあ、もう砂漠に戻ろう…か…」2人はその場で固まった。あの女性がそこにいる。服装や雰囲気は出会った時とは全く違っていたが、確かにあの女性だった。「ユエリャン?」彼女の姿をここで見かけることになるとは、タイヤンもまったく思ってはいなかったのだった。タイヤンは思わず走っていって彼女の手首をつかんだが、あまりの細さに慌てて手を離した。その反応は素っ気ないものだった。「何?」色素の薄い肌に、照明のせいではっきりした光と陰の現れた緑色の瞳が不愉快そうに揺れた。「タイヤン、もう少し品のいい行動をしないと嫌われるよ」ああ、確かにこの声は本当にユエリャンだ、とタイヤンはそう思った。「申し訳ない、こいつあんまり驚いたらしいね」ガオシンがタイヤンに目を向けながらユエリャンに話しかけた。「誰あんた」ガオシンは肩を落として、「こいつの仲間。あんた、あの湖で泳いでた子だろ?ここの地元の人じゃない感じがするけど」「細かいことはタイヤンに話したから、彼から聞いてちょうだい」

「どうやら、タイヤンは信用されてるものの俺は全然らしいね、美人さん」「当たり前でしょ、初対面なんだから」あまりの冷たい態度に、ガオシンは苦笑いしながら、「まあ、そりゃそうだな」と言うほかなかった。

「湖は、ロプ湖はどこだ」タイヤンはついに最も訊くべきことを言った。「今は、無くなってる。干上がってる。上流の水が途絶えているから。また、雨の降る季節に来るべきだと私は思うけれど」

「そうか」「乾期の話か」タイヤンとガオシンの2人は納得した。雨期にしか現れないということを教えているのだった。「でもユエリャン、なんでそんなことまで詳しく知ってるんだ?そして、なんで湖を追っかけて生活しているんだ?」

ユエリャンは緑色の瞳をタイヤンに向けた。

「おしえない」

さまよえる湖

湖、動く
朝になると、砂漠の強い直射日光が突き刺さるその痛みから逃れるために厚い麻のかぶりものをして汗をかきながらロプ湖を観測し続ける二人がいた。

「タイヤン、あの子は現地人か?」「いや、もう暗かったからよくわかんないんだけど…俺に昨日の夜、ロプ湖が来てるって教えてくれた。漢語だったぞ」「本当は湖からあがっててほしいところだけど、そういうことなら追い出す訳にもいかないか」彼女は湖の中程で泳いでいた。

ここにテレビの電波は届かない。もちろんラジオもだ。この砂漠で頼りになるのは方位磁石と、空からの電波と、夜の闇に閉ざされるその時間以外照りつける強烈な直射日光で蓄電した電力、そして週に一度訪れるヘリでの食料や水などの追加。ここは何度も民族同士の戦地になり、時代を経た貴重な品物はほとんど失われてしまった。それと共に、かつてここを守っていたその民族は散り散りになり、内紛を起こした国家も新しいスタートを切ったところだった。そういった事情で、治水のために現状を調査するためにこの若い2人が呼ばれたのだった。タイヤンとガオシンは貴重な、都市部からの人間だった。

「こりゃ、いい水だな。タイヤンはどう思う?」「想像以上に質がよくて驚いたよ。何しろ」「あれだけの大騒ぎになった場所だというのに、こんなに綺麗な水が流れているとはね。この塩さえ取り切れれば、人が住むには十分だ」

水の音をはねさせて、あの女性がこっちに近づいてくる。「もう、この湖はここを去ります」
「は?」
「もう、この湖はどこかに行ってしまうんですよ」

湖をやっと見つけるまでに到ったのに、移動してしまう、と彼女はそう言ったのだった。

「どこへ?」
「どこかへ」

「あの…」ガオシンが彼女に話しかける。「その、根拠は何なんですか」
「昔の本を、あなたたちはもうちょっと読むべきだと思うよ、それ以上言う必要はないでしょう。…Der Wandernde Seeと、昔は別名がついていた湖なのに」

「どうして、知っているんですか」

彼女は背を向けて、廃墟の方へ行ってしまった。本当に、この強烈な日光とは対照的なほど、冷たい態度だった。

ざ、ざ、と水がゆっくり動いていた。いや、揺れ始めたと言うべきか、しかし、湖水は確かに、間違いなく動いていた。

「Der, Wandernde,See…」
それはドイツ語での別名だった。ここからドイツはとても遠いけれど、その昔、ある探検家が「さまよえる湖」という仮定を作り上げたのだった。しかし、その後湖自体は消え、空からの観測が可能になった昨今では「もう消えてしまった」と結論が出ていた。この湖は別の湖であるはずなのに。

「消えたはずの湖」、そのことを思い出すのに、タイヤンは少し時間がかかった。「ちょっと待って!」既に遠くを歩いていたその女性は振り向いた。「どうして、あんたはそれを知ってるんだ?覚えてるんだ?」「話すには条件がある」「何でも聞くよ。構わない」

彼女は廃墟になった建物に背中を寄せた。
「ここでの核実験や戦争をとめて」
「俺はただの研究者だ!そんな力があるとでも?」
「砂漠には水脈があり、あなたには人脈があるのでは」
「そりゃ、俺をここに呼んだのは先生の」
ここでタイヤンははっと気がついた。

「俺がここで研究を続けるには、ここで戦争を起こされちゃダメなんだ」
「共通の目的だね」
彼女は近づいてきて、重そうなかぶりものを引っ張り、目を見せた。驚くほど肌は真っ白で、瞳は明るいグリーンだった。「あなたは、ここの地元の人じゃないのか」
「the last rose of summer...」彼女はタイヤンに顔を近づけて、歌の一節を歌った。すっと顔を離し、あっちを向いて話し続けた。
「既に私の民族は散り散りになって、他の国へ離れていった」
「あなたは難民にならなかったのですか」
「私は、その民族の中で嫌われ者だったから」
タイヤンがためらいながら言いたくない言葉を口に出した。
「混血だからですか」
「そう、でも時々街に行けば充分な収入はあるからこの自由も悪くない」
「ここから、街へ?相当遠いんじゃ」
また、彼女は後ろ姿を見せようとしたので、タイヤンはつい引き留めるように尋ねた。
「名前は?」
「訊くなら自分から名乗るべきではないかな」
「李太陽。これで訊いてもいいだろ」
「月亮」
「ユエリャン…もし別の名前もあるなら、訊いてもいい?」
「Christine」
「クリスティーン?どっちで呼んでほしい?」
「話しやすい方で。あなたは中国系でしょう、ユエリャンで充分。でも…」
「でも?」
「私はもうじきここからいなくなるから」
彼女はすっと離れていった。
「私はロプ湖と生きているの」
「移動して暮らしているってことかい?」
「そう、いいでしょう。素晴らしいことでしょう」

「だから、じゃあね、タイヤンが探し続けるつもりなら、たぶんまた会うでしょう」

ガオシンの呼ぶ声が聞こえた。
「あのな!突然いなくなってどういうつもりだよ?」
「ご、ごめん」
「今日は色々調査することがあるって言っておいたんだから、それくらい消化させてくれよ!」

「ごめん、ガオシン。あのな、この湖は動くんだな。」
「えっ?」
ざざ、ざざ、と水が流れていく。
「おい!本当に動いてるってことなのかよ!この平坦な土地で!昔話がよみがえったとでも?」

タイヤンは荷物をまとめながら言った。
「ガオシン、とにかく行こうか、追いかけないと」

より高台から川が湖に流れ込んでいる。
水は低きに向かって流れる、それは常識だ。
でも、この湖は平坦なこの土地で動いている。

「タイヤン…この動きは一体いつまで続くんだろうな?」
歩き続けること半日。ゆっくりであっても、やはりひどい疲労がたまってくる。
突然すさまじい音が響き、驚いたガオシンは悲鳴を上げた。
タイヤンは呆然と見ているほかなかった。

なんと、その後湖は一滴の水も残さず、消えてしまったのだった。
二人の落胆は相当なものだった。
「これは…どうすればいいって…」

「探し続けるなら、また会うでしょう」
ユエリャンが言った言葉を、タイヤンは思い出していた。

さまよえる湖

もし、ロプノールのために人が集まったなら。


青年たちが荷物を片づけている。 「タイヤン、もう暗い。今日はここで終わりだな。テントに戻ろう」 「うん、そうしよう。…でも、もうちょっとだけ。ガオシンは先に戻ってていいよ」 「熱心だな、相変わらず」 「だって、やっとこの砂漠に来ることができたんだよ、どんなに熱心にやったところで、十分なんてことなんかない。俺らはこんなチャンスでもなければ、研究現場に立つなんて夢のまた夢なんだぜ」 「はは、それは言えてる。でも一日を片づけなきゃならないし、俺は先にテントに戻ってるよ、サソリやなんかには気をつけろよ、薬が少ないんだ」

ここはタクラマカン砂漠、少数民族が細々と暮らす平和な小さな町がそこかしこにある。今世紀から来世紀の間には消滅の危険があると言われている言語を話し、それと同時に消えてしまうのではないかと思われながらも放置されている文化の中に暮らしている。

この民族は貴重な水脈を辿り、戦争の危険まで何度も繰り返した。更に核の危機までも、何度も通り過ぎた。だからこそ、命の水、それだけの安定供給を図ろうと水脈を研究する人を呼んだのだった。ただし、最大の希望である「ロプ湖」がもし見つかったとしてもあの湖は塩湖だったから、同時に政府の中に上り詰めた民族出身の政治家はそれを淡水にするための研究を他の場所で始めさせたことだけは、タイヤンもガオシンも知っていたのだった。

安定しない文化の衝突、重なる核実験の不安、そういったものもこの青年たちは覚悟しなくてはならなかった。でもそれは、ここに生きている少数民族たちも同じことだった。

暗闇の中に人の影が浮かんだのに気づき、タイヤンは立ち上がった。「誰だ」細い女の声は答えた。「…こんばんは、こんなに遅くまで頑張ってるのね。あまり暗くなってからでは片づけるのが大変。早めにしておいたら?」タイヤンは知らない振りをして、背を向けて荷物を片づけた。流暢な漢語だった。

「あなたはこの湖を探していたのではないのですか」タイヤンは息が詰まるように目を見張った。彼女の後ろに、ロプ湖が現れたことに、あまりに驚いたのだった。その時、言葉を失ってじっと見つめていた。彼女も、タイヤンを見つめていた。

「おい!ガオシン!ロプ湖だ!噂のロプ湖だ!」その女性の影は、その時もう踵を返し、離れていった。

さまよえる湖

幼い学生たちがお喋りをしている。
銀色のサッシに太陽の陽が当たっている。
「金曜日のメールの話、知ってる?」
「知ってる知ってる、気味悪かったよね」
「ねえ、でもさ、最近来なくなったと思わない?」
教員とおぼしき男性が姿を現す。
「おい、お喋りしてないでさっさと掃除終わらせろよ」
「はーい」
「さっき喋ってたのは金曜のメールのことだよな?」
「なんだ、先生も興味あったんじゃないですかー」
「ネットワークが新しいものに変わってからなんだよな、メールが来なくなったのは」
「先生そういうの詳しいですよね」
「もしかしてさ、誰かが古いネットワークの中にいて、優しい言葉をたくさん人に送ってたとか思っちゃうよね」 「やーだ、そんなのよけい気味が悪いって。本の読みすぎだよ」
教員は言った。
「もしかしたら、そんなことができる人がいたかもしれないね、そういうこと考えるのは悪いことじゃないよ。神秘的でいいじゃないか」
真夏の強い日差しが、彼らの離れた場所に刺すように降り注いでいた。
(了)

電子世界2

「トモエ、もうメールを送るのはやめだね」
「そうだね」
トモエはネットワークの中で、アキとヨシと一緒にあらゆる人に「雨」という名前でメッセージを送っていたのだった。「どうして、もうやめるんだ?」

「私たちはじきに、存在できなくなるのさ」アキが脚を組んで、片方の脚を揺らした。
「あの男の子は情報が早かったね、キャッシュからニュースをもらったんだけど、どうやらもうこのネットワークも更新されて、古いネットワークからの乗り換えが始まっている。」トモエはテーブルに肘をついた。

「なるほど、俺たち消えちまうのか」
「あんたには悪いことしちゃったね、元々私はトモエにくっついてここにずっといるつもりだったんだけど、あんたが外にいてくれれば、あんたは無事な一生を送れたというのに」アキはヨシに向き直って、話し続けた。
「そんなこと言ってもなあ、身体ごとここに来ちゃったからな」ヨシは笑った。
「後悔先に立たずって話だね」アキは笑った。
トモエが静かに言った。「でもヨシはアキが好きだからそうしたんでしょ」

「後悔はないよ、どうでもいいことだ」

「元々選択肢なんかなかった」アキは目を閉じた。
「知らないことが重なったし」トモエも目を閉じた。
「無力なまま動き続けてたんだ」ヨシも、目をそっと閉じた。

3人はそのまま、動かなくなり始めた。 アキの髪留めが溶け、髪がほどけ、トモエとヨシがアキの両側で繋いでいた手が緩み、3人は一緒に砂のような数字と記号になって、消えていった。

電子世界2

「ねえ、いつもメールをくれてありがとう」
白と灰色の古い思い出の中で、その女の子は一人で携帯をいじっていた。白いリネンの中、彼女は最後に送信ボタンを押して、目を閉じた。この病院の就寝時間はとっくに過ぎていた。その日は、金曜日だった。夜、彼女が眠っている間に、そのメールの返事は届いた。

枕元に置いたタオルの下で、携帯が短く震え、彼女は一瞬目を醒ました。しかし、彼女はまだ小さく幼かったのでそのまま寝入ってしまった。

朝、採血のために声をかけられ目を醒ますと、少し立体的な雲の陰のはっきりした空が遠くに見えた。彼女は窓際のベッドで、慣れた風に採血をしてもらい、小さな絆創膏を上から押さえた。朝食の出される7時まではまだ少し間があった。短く切りそろえた髪を揺らして、携帯電話を起動すると、小さなアイコンが着信を知らせていた。

彼女は食事が減って、日に日にやせ細っていった。彼女はあらかじめ知らされたその現実を受け入れ、それが自然なことだと思っていた。

友人は一人一人、少しずつ来なくなっていった。そしてまた、それを悲しむような余裕は無くなっていった。彼女は6人部屋から4人部屋へ、2人部屋へと少しずつ移動されていっていた。

「ねえ、あんた悲しくないの」
マスクをかけた制服姿の女の子が、話しかける。
「何が」
もはやベッドに横たわるしかできなくなった彼女は、無気力に笑って言った。
「あのさ、金曜日のメールって知ってる?」
「知ってる。今頃何を言ってるの?みんなあの気味の悪いメールなんか常識で、もう話題にすらならないじゃない」

「私、あんたがこのままいなくなってしまうなんて辛いよ」
「知ってて友達になったんじゃなかったっけ?…ほら、3時過ぎにはおばさまが来るから、帰らないとまた怒鳴られるよ。おばさまのこと、あまり嫌わないで。早くに寿命が終わってしまうわたしと、仲良くする人がいるとその人が悲しむからああやって…近くに人が寄らないようにしているのだから」
彼女は、息が苦しくならないように、少しずつ、声を出した。
「あの人は、自分たちが財産を早くに継げるからそうしてるんだよ」
制服を着た女の子は怒って、立ち上がった。

彼女は言った。「それで、あのメールのこと知ってるんでしょ、あなたはどうするの」
「私は、あのメールの言う通りにする。他にはもうない」

「一緒にいてくれるの?ありがとう」
彼女は笑った。

「金曜日の夜、起きていようね」
二人は約束した。

金曜日の夜が訪れた。
その時、彼女は昏睡状態にあった。
その時、女の子は目を醒ましていたが、彼女の状況は知らされていなかった。家族ではなかったから。

22時が訪れた。 既に死の扉を開いた彼女は少しずつからだを失っていった。個室のテーブルの上に置かれた携帯電話から、「あの不思議なメール」とのやりとりが消えていった。
制服を着たままの女の子もまた、少しずつからだを失っていった。枕元に置いてあった携帯電話から、「あの不思議なメール」とのやりとりが消えていった。

小さな声が聞こえる。
「あなたたちが一緒にいられるようにしてあげる」
その文字が細かな数列になって、また更に数列が小さく分裂していき、消えていく。

「お願いします、私たちは一緒にいたいんです」
その文字が細かな数列になって、また更に数列が小さく分裂していき、そして小さな0と1になって消えていく。

「できるならやってほしい、どうか力になってください」
その文字が細かな数列になって、また更に数列が小さく分裂していき、そして小さな0と1になって消えていく。

2人は夢のような暗闇の中、手をつないでいた。知っているひとの顔が浮かんでは細かな数列になって、あらゆる記憶が小さな0と1になって消えていく。

女の子はひとつの姿にふと手を伸ばした。「お別れだね」

すると彼女は女の子を激しく罵った。「わたしが、健康じゃなかった間に、あなたは他の人に目を向けていたの?わたしを独りにしないって言ったじゃない、嘘つき!」彼女は女の子の手を離した。「もう会いたくない、ここから消えて!」

すると、女の子は冷たくなったベッドの上で目を醒ました。既に朝だった。女の子は、お昼すぎに病室を訪れた時に、彼女がいなくなったことを知ってひどく嘆いた。

しかし彼女はその病室を出ると、暗く暖かなところにいた。
「おはよう、新しくここに来てくれた子だね。改めて、名前を聞かせてくれるかな」
「 」
「そう、こちらも改めてご挨拶を。雨と申します。よろしくね。」
彼女はそこで意識を失い、眠るのだった。

電子世界2

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すべてはフィクションです。

ご不便おかけしますが、目次カテゴリからご覧ください。

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